far beyond
06
「鋼の!!!!!」
エドワードが無意識に心の中でロイに助けを求めたその時、扉の向こうからロイの声が聞こえた。
「た、大佐・・・!助けて!!」
風邪でほとんど声が出なくなっていたが、力を振り絞ってロイの名を呼んだ。
「鋼の?!どこにいる?!?!」
その声はロイに届いたらしく、声の発信源を探して部屋のすぐ近くまで来ていた。
「大佐!!俺はこ・・・っ!!」
「少し静かにしてもらおうか。」
エドワードが自分の居場所をロイに教えようと声を上げた時、上にのかっていたキャリーに手で口を塞がれた。
その時、バンッという音と共に扉が開かれ、ロイとリザが姿を現した。
「鋼の?!?!」「エド君?!?!」
ロイとリザは扉を開けて最初に目に入ったのがキャリーにのっかられ、口を手で塞がられているエドワードの姿だった。
「・・・准将・・・鋼のを帰して頂きたい。」
「断る。彼女は私のものだ。」
「彼女はあなたのものではありません!」
「彼女はマスタング大佐、お前の婚約者ではないそうじゃないか。」
「だが、私は彼女を愛している。」
ばっとそこにいる誰もがロイに視線を向けた。その時、キャリーのエドワードを拘束していた手が緩むのをロイは見逃さなかった。
「鋼の?!今だ!離れろっ!!」
エドワードはその言葉にはっとしてキャリーを蹴飛ばし、ロイとリザの方へ離れた。その瞬間パチンと音がし、振り返るとキャリーが少し
焦げて倒れていた。
「中尉、ハボックを呼んでくれ。」
「はい、わかりました。」
ロイに言われた通り、リザはハボックを呼び、キャリーはハボックに連れられていった。エドワードを誘拐した男達も一緒に来ていた軍
人に捕らえられ、軍に連れていかれた。
「エド君、大丈夫?」
エドワードに最初に声を掛けたのはリザだった。
「うん、だいじょう・・・ぶ・・・。」
大丈夫と言いながら立ち上がろうとするがその場に崩れ落ちそうになった所をロイに抱きとめられた。
「まったく、何処が大丈夫なんだね?」
「なっ!離せ!!」
「なぜ風邪をひいていたことを言わなかったんだ。言えば頼まなかったのに。」
暴れるエドワードにロイは少し声のトーンを落として尋ねた。
「べ、別にいいだろ。俺の勝手だ!」
「だが、それで酷くなってはどうしようもないな。中尉、車の用意をしてくれ。鋼のを病院まで運ぶ。熱が高くなったようだからな。」
「はっ、かしこまりました。」
そう言って、リザは車の用意をしに部屋を出て行った。しばらく沈黙の後、エドワードがロイに尋ねた。
「なぁ。あんたいつから俺が女だって気付いたんだよ。」
「ああ。そんなの最初からわかっていたよ。」
「はぁ?!」
「いや、正確には2度目に会った時だがね。君はどうみても女性だよ。」
「なんだよ?!それ!!」
「それに私が君を好きになったのも会ってすぐだよ。君のあの焔の灯った瞳が忘れられなくてね。」
「そんなこっぱずかしいことをよく言えるな////」
「それで君は?」
「はっ?!」
「私の告白の返事は?」
「えっ!あ・・・。えっと・・・・。俺は・・・・・・・・。」
エドワードが言おうとした瞬間、リザが戻ってきた。
「大佐、お車の用意ができました。」
「ああ、わかった。」
少し残念そうに返事をして、ロイはエドワードを横抱きにして歩きだした。
「うわっ!/////なっ!降ろせ!!自分で歩ける!!/////」
「途中で倒れられてはかなわんからな。」
「お、重いし!!」
「何を言ってるんだい?羽のように軽いよ。」
「/////////」
エドワードは真っ赤になって顔をロイの胸にうずめてしまった。しかし、あと少しで車だというところでいきなりエドワードが腕を首に回し
て耳元で呟いた。
『 』
そして更に顔を真っ赤にして顔を隠してしまった。ロイは今言われた言葉に唖然とし、笑顔になって車へと急いだ。
―――――まいった・・・・『俺も好きだよ』だなんて・・・・その一言がこんなにも嬉しいなんて・・・・・重傷かな・・・・
その後、ロイがずっと笑顔だったので彼の部下たちは非常に気味悪がったとか・・・。
数日後・・・
あの後すぐにエドワードは病院に連れて行かれ、数日入院するよう医者から言われ、渋々ながら(ほとんどアルフォンスの説得)入院し
ていた。その間に、イリアが見舞いに訪れ、エドワードは自分の正体を明かしたが、イリアは別に気にした風でもなく2人は友達になって
いた。
一方ロイは・・・
エドワード誘拐事件により、仕事が山積みになっており、リザによって司令室に缶詰になっていた。しかし、今日の分の仕事が終ったら
エドワードの見舞いに行っていいという許可が出たので死ぬ気でがんばっているところだった。その時、司令室の扉が開き、イリアが入
ってきた。
「ご機嫌よう、ロイ様。皆様方も。」
「ああ、イリア嬢。ようこそいらっしゃいました。ですが、私は見ての通り忙しいのでまた後でにして頂けませんか。」
「すぐ済みますの。ロイ様。そのお仕事が終ればエドの元へ参りますの?」
「はい、そのつもりですが。」
「残念ですわ、ロイ様。エドはつい先ほど旅発たれましたの。」
「はっ?!」
「今日のお昼にお医者様から退院の許可が出ましたの。それで許可が出た途端にアルを連れて旅に行かれましたわ。」
「そうですか・・・・・・。」
ロイは誰が見てもわかるほど落ち込んでいた。
「ですが、伝言を預かっております。『今回はなるべく早く帰るようにするよ。最低でも1ヶ月以内には戻るようがんばるから、大佐も司令
部もみんなに迷惑かけないように毎日ちゃんと仕事しろよ。』だそうですわ。」
「それは本当ですか?!イリア嬢!!」
「ええ。本当ですわ。ただし、毎日私くしがチェックさして頂きます。その日のうちにお仕事が終っていなければ、エドに会える日が遠のく
とお思いください。」
「なっ!?」
「全部エドからの伝言ですわ。ちゃんとホークアイ中尉にも許可を頂いておりますので。」
イリアはニッコリと笑って言った。
「それは本当かね?!中尉!!」
「はい、本当です。エド君の提案ですが、私も賛成さして頂きました。エド君に会えるのも会えないのも大佐しだいです。」
リザはロイにきっぱりと言った。
それから毎日、きちんと仕事をするロイが見られた。だが、1ヶ月後にエドワードが戻ってきた時にやめてもらうよう懇願しているロイの
姿が見られた。
END
